多様な民族・言語・宗教・文化を有するインドの風土で、芸術の高みまで達した古典舞踊は7つあり、インド七大古典舞踊といわれています。南インドのバラタナティヤム・カタカリ・クチプリ・モヒニアッタム、北インドのカタック、マニプリ、そして東インドのオリッシィの7つです。それぞれ育まれた地方色を豊かに反映しつつ高度に様式化され、現在、世界に通 用する芸術として注目されているものも少なくありません。特に、バラタナティヤムとオリッシィは世界の至る所で公演されており、その表現方法が対照的であることからよく比較されます。両者とも高度な訓練を受けた女性のダンサーがソロで踊るものですが、前者は直線的でダイナミックな動きを特徴とする一方、後者は曲線的でやわらかい動きを特徴とし、同じインドの古典舞踊でも味わいや印象、その他衣装や装身具に至るまで全く異なります。
しかし、ヒンドゥー寺院で「祈りのかたち」として発達したという歴史的背景は同じです。
インド古典舞踊全般に共通する基本作法は、2千年前に書かれた古代サンスクリット舞踊聖典「ナーティヤ・シャーストラ(演劇の科学)」によって体系的に伝えられています。この文献の中で著者バラタ・ムニは、演劇・舞踊の技法を分析しており、手の型ムドラ-や複雑な意味のある手振り、伝統的な化粧法・衣装に至るまであらゆる角度から詳細に説明しています。長い長い歴史の中で、時代の流れに揉まれ存在が危ぶまれながらも、インドの人々の非凡な信仰心と芸術へのたくましい創造力によって受け継がれ、現在もなお成長し続けているのがインド古典舞踊です。
インド古典舞踊のほとんどは神に捧げる「祈りのかたち」として寺院で発祥、継承されてきました。
二千年前に著された古代サンスクリット舞踊聖典「ナティヤ・シャーストラ」によって、手・頭・首・眼・足などの身体技法が体系的に伝承されています。
インド古典舞踊は、大地を踏み鳴らし、足首に結わえた鈴(グングル)の音を高らかに響かせてリズムを刻みながら踊ります。 大地にねむる精霊を鎮め、踏みしめた力の反作用を自らの身体のエネルギーとして踊ります。